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特級錬金術師の旦那様

第20章 聖女


会話が発展していっている。あ、マーフィスが今になって、美人を引き剥がした。今までの女性相手の様に、不愉快さとかはないけど。

「イニス・・・師匠に感化され過ぎだ。それに、サーファスさんから知らせはあったんだろ?」
「ゼヌリス様はサーファスさんの報告を、ただのデマだと仰っていました。」
「そうかよ。全く、失礼だな。」

マーフィスが私の方に振り返った。それに続いて、美人も私を見る。

「依頼中だったのですか?」

ここでも、その扱い。まぁ、仕方ないのかもしれないけど。

「俺の嫁を連れて来た。ミア、来いよ。」

とんでもない状況に、私の足が進まない。そして、美人も嫁のワードに固まっている。

「ミア、俺の傍に来いよ。」

いつもと変わらない穏やかな笑み。吸い寄せられる様に近付き、差し伸べられた手を取った。いつもの様にキュッと握り締められ、腕の中に抱き寄せられる。

しかし、私の背後にいる美人から金切声が上がった。

「そ、そんなの認められないわ!!」

その時になって、マーフィスの不機嫌な声が頭の上から聞こえた。

「お前の認否なんてどうでもいい。」
「そんなこと言っていいのですか?ゼヌリス様は私をお認めになられていますのに。」
「なら、俺を追い出せばいい。」
「そんなっ!!マーフィスは後見人のゼヌリス様から、ここからも抜けると言うのですか?私はずっと・・・マーフィス様が帰って来るのを待っていたのに。」
「俺の人生は俺が決める。」

背中越しに聞こえる、悲しみの籠った声は私も胸が痛くなった。でも、私が居る事で今までを捨てさせていいのだろうか?

「イニス、止めなさい。」
「ゼヌリス様・・・。」
「久しいの、マーフィス。」
「そうだな。で、これはどういう事なんだ?」
「イニスは昔からマーフィスに恋慕しておったんじゃよ。次にマーフィスが帰って来た時に独り身なら、マーフィスの伴侶にイニスをと考えていたんじゃ。だが、本当に伴侶を得たんじゃの。サーファスの言った事は事実じゃったと言うことか。」
「あぁ、嫁のミアだ。」

私は向き直り、挨拶をした。マーフィスのお師匠様の隣りにいる美人は、私を射殺しそうな目で睨み付けていた。ずっと好きだったのなら、無理もないのかもしれない。

「まさか、貴族の娘を娶るとは思わなんだ。よく使えもしない娘を囲ったの。」
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