第20章 聖女
「ただ、噂で聞いたのですが・・・異世界人だと言っていたそうですよ。貴女と同じですね、ミア。」
三人から注目を集めて、吃驚する私。
「ど、どうして・・・。」
「どうして分かるのかですか?簡単なことです。私たちも同じ異世界人だからです。その異世界人が集まって作られた町がエメルアなんですよ。」
「じゃあ、マーフィスも?」
「俺は皆と少し違う。俺は召喚されたんだ。ある滅亡した国によって。」
「滅亡?」
「八年前にマーフィスは召喚され、それを庇護したのがゼヌリス様です。まぁ、師匠と言いつついい様にマーフィスを扱っていましたがね。」
「だからなの?だから、自由をって・・・。」
「あぁ。」
お互いの種明かしを終え、私たちは前世と同じ文明が栄えた町に足を踏み入れた。ある意味この町も閉鎖的な場所。でも、近代的な街並みに度肝を抜かれた。
この町は議会で運営され、秩序も法もあった。そう、異世界人にとって違和感のない場所。前世同様、市役所に住人登録をしては晴れて住民となった私たち。
町外れに土地を購入しては、それぞれに家を建てた私たち。近代文明と錬金術や魔法が混載した不思議な町で、私たちの生活が始まった。
「近代的なのに、冒険ギルドがあるのはこの世界だからだよね。」
「そうだな。見てて飽きない。」
「ねぇ・・・あの煌びやかなのは?」
「前世で言うラブホテル。」
「そ、それまであるの?」
「利用客がいるって事だろ。興味あるなら入って見るか?」
「・・・いいの?」
そう、ちょっとした好奇心。そして、マーフィスに回るベッドの上で押し倒されている。スイッチが入ったみたいで、そのまま愛を育んでしまった。
「ミアの中って、本当に病みつきになる。もっとミアの中にいたい。」
「と、泊るの?」
「そうだな、たまには趣向と場所を変えるのもいいな。あ~、早く俺たちの子が欲しいな。」
マーフィスたちが町を別の意味で満喫している頃、婚儀と称された儀式を終えた聖女。ある高い塔の中で、ただ国の安寧だけを祈る様に仕事を与えられ幽閉された。
その事で精神を病み、心を壊した聖女はこの国を呪う様になった。その数年後、この国はスタンピードで滅ぶことになるのは別の話し。