第20章 聖女
「ミアに無くても、ミアを見たヤツが邪な気持ちを持つかもしれないだろ?ミアは可愛いんだぞ。絶対にミアを気に入るに決まってる。」
何言ってんだろ・・・マーフィスじゃあるまいし。
そんな事を思っていたんだけど・・・。マーフィスは冗談では無かった様だ。
「ううっ・・・唇が腫れそう。」
道中は、マーフィスからの重い愛が炸裂中である。無駄に色気振り撒いて来るし、色目も使って来る。嫁相手に何やってんだか。
余計なことを言ったものだよ、聖女様は。大方、町でマーフィスの噂を聞いて興味を持ったのだろうけど、付き人にして何が目的なのやら。
「マーフィス?」
「ん?どうかしたか?」
「聖女って、どうすれば聖女だって認定されるの?」
「光魔法が使えることと、水を聖水に出来ること。・・・俺たちが作る薬に使われれば、効能が向上するって噂されている。不愉快だけどな。」
マーフィスが苦い顔をしている。確かに、そう言われたら錬金術師が作った薬より上だと言われている様なものだ。
「眉唾かもしれない噂でしょ?気にする必要なんてないよ。マーフィスは凄いもの。」
「久しぶりに聞いたな。ミアの凄いって。」
「私は事実を言ったまでだよ。それより、後どれくらいで着くの?」
「そろそろだな。」
そんなマーフィスの言葉に反応するかの様に、森の中に並ぶ家々が見えた。家の周りには囲いなどなく、ただ家が並ぶだけ。不思議な見た目だ。
でも、この後私は最大に不愉快になる。
一軒の家から飛び出して来たのは、これまた美人の女性。年齢は私たちと変わらない。そんな美人がマーフィス目掛けて駆け寄って来ては抱きついた。
「お帰りなさいませ、マーフィス様。待ってたのですよ?」
「久しいな、メリア。」
「私を迎えに来てくれましたのでしょう?結婚式なら直ぐに出来ますわ!!」
ギョッとした顔の私に反し、マーフィスに欲望の限り囀っている美人。いつもと違って、纏わり付かれても嫌がる様子がない。
「ゼヌリス様も言ってたじゃないですか。マーフィス様の相手は、私がいいって。」
「あぁ、そんなこと言ってたな。でも、ただの師匠の冗談だろ。全く、俺がそういう事に興味を示さなかったからって、幾らなんでも嫁まで決められるのは違うだろ。」
「私だって、いつまでも子供じゃありません。マーフィス様との子だって作れるんですから。」