第20章 聖女
「なぁ、ミア。聖女って男好きなのか?」
「はい?」
それは想像もしていなかった内容だった。
「どういうこと?」
「付き人になれと、アリオンが口説かれているらしい。その上、俺にも取り成せと言っているそうだ。」
開いた口が塞がらない。アリオンさんは妻帯者だ。そんな人に付き人?それにマーフィスに取り成しを頼むなんて。
「アリオンさんは、何って?」
「無関心。それしかない。」
聖女相手に無関心って・・・。
「聖女のこの世界の立ち位置ってどうなの?」
「どの国の王族も、喉から手が出るほど欲しがる存在だろうな。聖女が国に落ち着けば、栄えると謂れがある。」
概ね、そういうものだろう。聖女を囲おうとする、何処かの国の王族がいるかもしれない。
「・・・綺麗で慈悲深い人なのかな。」
「無駄な気遣いは必要ない。」
「マーフィスはそうは言うけど、仕方ないじゃない。気になるんだもの。」
「可愛いのな、俺のミアは。」
余裕な笑みを浮かべながら、私の頭を撫でるマーフィス。そんなマーフィスに抱き付いておく。
「ミアが可愛い。あ~、本当に好きだ。」
「マーフィスったら・・・本当に緊張感無いんだから。」
マーフィスといい、アリオンさんといい・・・一先ず、愛妻家で良かった。それに、聖女の目的はモーリストにある世界樹の木と町への祝福。
さらに、翌日。
あの紙吹雪が舞い込んで来た。怪訝な顔をするマーフィス。
「どうかしたの?」
「アリオンは俺と同じく里帰りなんだが、その後を付いて来ているそうだ。付いて来ても無駄足になるのに。」
「どうして?」
「師匠の住処には、部外者は入れない。閉鎖的だと言っただろ。誰でもが入れるわけじゃない。」
聖女を拒否する人たちって、これも想像もしていなかった。
「多分・・・教会の差し金かもな。俺たちのことを金蔓としか考えていないんだろ。」
う~ん・・・教会の差し金。
「あ、そう言えば・・・教会の仕える騎士は、見目のいいのを集めていると聞いたことがある。」
教会だけど、欲を集めた場所らしい。そして聖女は、その騎士だけでは満足しなかったのかな?出来る限り関わりたくない。
「ミア?」
「なぁに?」
「浮気したら、物理的に繋ぐからな?」
「なっ!!?私がするわけないでしょ!!」
憤慨する私。