第19章 世界樹の雫
あちこちにも錬金術師が作った大小の町や村があるそうで、横の繋がりが濃い故か揉め事などはないらしい。
それにしても、この温泉の効能からかマーフィスの身体が美しい。マーフィスは私を綺麗だと言うけれど、私などよりマーフィスの方が綺麗だと思う。
「我慢しなくていいぞ?」
「えっ?」
「ほら、触るなり舐めるなり好きにしていい。」
つい、出来心。そう、つい・・・マーフィスの声に導かれて、私はマーフィスの首筋に唇を押しあてた。舌先でマーフィスの首筋を這わせば、マーフィスの漏れた熱い吐息。
その声に応える様に、私は出来心を満喫してしまった。マーフィスの綺麗な瞳に色香が見え、吸い寄せられる様に抱き合い・・・愛し合ってしまった。
出来心万歳である。
情事が終わった後も、お互いにベッタリのまま家路に向かった。たまには、こういう日があってもいい。夫婦だもの。
翌日。
来客の声で目が覚めた。微睡む私の額にキスをしては、マーフィスは玄関へと行った。気だるげな身体を起こし、浴室へと向かう私。そして鏡に映った身体を見て、私は思わず叫びそうになった。
「これじゃ、外なんて歩けない。」
マーフィスも出来心満載だったのだろう。でも、あんな綺麗な人にこうも執着されるのは悪い気はしない。それに、いつも大事に愛してくれる。
マーフィスの欲を讃えたあの瞳は、誰でも心を奪われるだろう。でも、誰もがその瞳を見られる訳じゃない。その事に優越感を抱く。
湯船に浸かり、ホッと一息。誰かとの声が微かに聞こえて来るけれど、私は心穏やかに心地いい湯に浸っていた。
意識もハッキリしては、浴室を出る。マーフィスはソファーで寛いでいた。安定に疲れている素振りもないし、見目麗しい。
「ミア、おいで。」
両手を差し出すマーフィスに私は躊躇なく収まった。何よりもこの腕の中が心地よくてホッとする。
「マーフィス、擽ったいよ。」
あちこちにキスをするマーフィスに笑いながら、私はそう言った。
「嫌じゃないだろ?」
「嫌じゃないけど・・・違うところにも欲しいなって。」
「あぁ、それもそうだな。」
全てが甘い。
「そう言えば、誰だったの?」
「ん?あぁ、コーノスさんだった。昨日の薬代を貰っていた。それと、あの後の経緯も聞いていた。」