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特級錬金術師の旦那様

第18章 世界樹の町


森の中を抜けていくと、そう広くはない水色の花の群生地を見つけた。風に揺れるその花は、私を癒してくれる様だった。

「この花の葉っぱが、薬草になるんだ。十㎝サイズのものを採取してくれ。」
「分かった。」

時間にして三十分ほどだったが、想像以上に採取出来た。嬉々としてマーフィスに声を掛けようとした時、 私の直ぐ傍を何かが掠めて行った。

「振り向くなよ?そのまま俺の傍に来い。」

得も言われぬ恐怖を感じたが、マーフィスに言われた通りに駆け寄ってはしがみついた。マーフィスの腕に抱き込まれ、安堵の息を吐く。

「何だったの?」
「蜘蛛の魔物だ。ミアに糸を吐いたから、駆除した。それだけだ。」
「わ、私、食べられそうになってたの?」
「ミアを食べていいのは俺だけだ。」
「えっ?」
「冗談はさておき、魔石と何かドロップしたようだな。」

魔物がいたであろう場所には、綺麗な黄色い魔石と大きなズタ袋があった。

「ニジイト?それって、糸なの?」
「あぁ、そうだ。文字通り虹色のな。」

ズタ袋から出された糸は、キラキラしてとても綺麗な虹色の糸だった。思わず感嘆の声を上げる私。

「気に入ったのなら、この糸を使って何か作ってやるよ。」
「えっ、でも、凄く高価でしょう?私には勿体ないよ。」
「ミアを着飾れるのなら、何も勿体なくなんかない。それに、ミアを着飾れるのは俺だけの特権だからな。ん?」

マーフィスにつられて空を見上げた。視線の先に居たのは、若草色の大きな鳥が私たちを睨んでいた。あんなに綺麗な色だけど、全然可愛くないし好戦的だ。

「アレの羽、良い値で売れるんだよなぁ。よし、仕留めよう。ミア、目を閉じて耳を塞いでてくれ。」

でもね、私が耳を塞ぐより先にマーフィスは雷を落としたの。また、目がチカチカするし耳がキーンってしてる。思わずよろけた私を、マーフィスは抱き留めてくれた。

「大丈夫か、ミア。目を閉じて耳を塞いでろって言ったのに。」

そんな残念そうな声で言わないで欲しい。マーフィスの行動が早過ぎただけだと思うのに解せない。

「俺に掴まってろよ。」

急に抱き上げられた私は、驚いてマーフィスに抱き付いた。だから、マーフィスは行動が早いんだってば。

向かった先は、さっきの鳥が落ちた場所。少し目が慣れた私が目の当たりにしたのは、若草色の羽が詰まったズタ袋だった。
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