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特級錬金術師の旦那様

第18章 世界樹の町


恐ろしいことでもあったのかと思う程、目の前の職員は怯えていた。そんなにマーフィスが取引を止める事が痛手となるのだろうか?幾ら何でも、マーフィスが優秀だからと言ってもそんな事は・・・。

「あ、申し遅れました。副ギルド長のコーノスと申します。どうか、くれぐれお願い致します。」

まさか、副ギルド長だったなんて。そんな人が私に低姿勢で接してくれる。じゃあ、私もご挨拶を。

貴族として培った振る舞いで、コーノスに挨拶をした。アレ?何か、頬が赤い?体調でも悪いのだろうか?

「美しい・・・。」
「はい?」
「あ、その・・・とても所作が美しいと申しました。」
「ありがとうございます。」
「貴女の様な方が、どうしてあの方と・・・。顔?嫌、身分?ひっ!!?」

気付いた時には、コーノスの隣りにマーフィスがいた。

「惚れるなよ?ミアは俺の嫁だからな。あ、あいつ意識を戻したぞ。」

顔を腫らしたさっきの男が、怒りに満ちた顔で近付いて来た。そして、私に掴みかかって来たのを、もう一度ぶっ飛ばしたのはマーフィスだった。今度は、完全に伸びてしまった様だ。

マーフィスはその男に近付き、頭を掴んで引き上げた。鈍い音が聞こえるけれど、聞かなったことにしておこう。そして、意識のない男の両頬を意識が戻るまで叩き続けた。全く以って、容赦ない。

意識が戻った男は騒ぎ立てたけれど、そんな男にマーフィスは何やら囁けば大人しくなった。小型犬の様にプルプルしては、恐怖で顔を引き攣らせている。

「コーノス副ギルド長、今からこいつは下僕となって働くそうだ。好きに使ったらいい。」
「えっ、下僕ですか?」
「そうだよな?ギルド内で迷惑かけたんだ、その詫びとして身体(=労働)で返すんだよな。」

男は何度も頷いている。どうやら、かなり強めのお灸をすえたらしい。更に、私の前に来て土下座の謝罪をしてくれた。

顔はかなり腫れていて、ちょっと可哀想なくらい。でも、私が心配したのはマーフィスの手の方だった。

「マーフィス、手は大丈夫?」
「優しいな、俺のミアは。勿論、大丈夫だ。じゃあ、しっかり働けよ?逃げようなんてしたら、世界樹の枝に括り付けて吊るすからな?じゃあ、行こうかミア。」

町の中を歩きながら、私はマーフィスにコーノスから聞いた言葉の意味を尋ねた。


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