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特級錬金術師の旦那様

第18章 世界樹の町


旅に出てから、かれこれ一ヵ月。森深いところに、世界樹の町【モーリスト】はあった。この森は、山に囲まれた聖域とされ異国の人々が行き交う場所。

町並みは自然に溢れた、穏やかなところだった。でも、何処にでも騒がしい人がいる訳で・・・。近隣国の何処かの貴族御一行が、避暑地として訪れているのだと冒険ギルドで話しを聞いた。

私は今回もマーフィスの傍で、掲示板を見上げていた。流石、世界樹の町と言うことで森では良い薬草が採取出来るらしいのか、依頼の数が多い。

「ねぇ、マーフィス。あの球根って凄く珍しいものなの?」
「ん?あぁ、アレか。確かに珍しいな。ただ、一つ見つければ量は確保できる。」

どうやら、とても大きい球根らしい。そして、その球根の採取の依頼が多い。一体、どんな事に使われるのだろう?

「さっきの依頼は、どんなものを受けたの?」
「世界樹の雫と、その球根だ。他にも、幾つかの薬草を採取しようとも思っている。それに、この町は薬草を使った食事が多い。保養を兼ねて訪れる人も多い。」

薬草を使った食事と言うのは、薬膳的なものなのだろうか。ちょっと、興味ある。そんな事を考えていると、マーフィスが受付嬢に呼ばれて私から少し離れた。

そして、お約束だ。

「おい、そこの女。一晩、俺の相手をしろ。」

しかし、私は球根のことで頭がいっぱいだった。最初は百合根を想像していたけれど、蒟蒻芋や里芋なども思い描いていた。

「おい、俺様を無視するとはいい度胸だな。」

ん?何か、騒がしいなと思い振り返った。意外にも至近距離にいた、煌びやかな衣装を身に纏った成金貴族のボンボンにしか見えない男が私に怖い顔を向けていた。

「意外にも、可愛い顔をしているじゃないか。それに免じて、俺様を無視した事は不問にしてやろう。ぐへっ!!」

あ、目の前の男が吹っ飛んで行った。そして、殴ったのは見知らぬギルド職員だった。いいのか?職員が貴族っぽい男を殴っても。

「お怪我などありませんか?」
「あ、はい。大丈夫です。」
「良かった・・・我がギルドが取引停止にされるところでした。本当に間に合って良かった。」
「取引停止?」

何のことだろう?

「マーフィスさんから、事前にこの町に来ることが知らされていたんです。依頼を受ける代わりに、マーフィスさんの奥様を優遇しろと。何かあれば、今後一切の取引を止めると。」
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