第5章 “悪夢”
主人公said
思った通りの“場所”に移動すると中から
言い争う声とカウントしている声がした。
扉を開け、両手を上げる。
「誰だ」
安定感のある低い声、重厚感のあるガチャリとする音の方へ目だけを向けるとそこにはジンが居た。
「お前は?」
「ジンにお土産を渡しに。」
「何だと?」
自分の背中に手を入れようとすると動くなと言わんばかりにジンが近付いてきた。
「なら、取って貰える?ズボンの背中側にタブレットを差し込んでる。そのタブレットからアクセスできるようにしてある。使うつもりだったんでしょ?
東都水族館の、車軸に。」
ジンが私の背中に手を入れタブレットを取るとベルモットを呼び彼女に確認するように言った。
「…準備万端のようね。停電させるのも問題なく終わりそうよ。でも、」
話を続けようとしたベルモットに態とキツく目を向け、そのままポケットに入っている携帯に目をやるとベルモットが気付いて携帯を取り出した。
「…コイツの事は後回しだ。
まずは貴様だ、バーボン 」
ジンが銃をバーボンに向けると、バーボンは柱の付け根までしゃがんだ。
直後、天井照明が様々な部品と共に降ってきて部屋の中央に向けられていたライトに直撃する。
突然部屋の中に暗闇が訪れるが私は動かずに居た。
扉が開かれ、いつか見た展開だ。
ただ一つ違うのは今回は私がいるという事。
「待って!ラムからの命令よ。」
目を閉じて次の行動を考えていた。目を閉じたのは周囲を観察していると妙に勘繰られない様にするためだった。
「まずはキュラソーを奪還する。
行き先は 東都水族館。」
「まさか、この子。」
「ああ。それは俺も気になる所だ。
コイツは連れて行く。」
ベルモットに銃を突き付けられ
ジンはウォッカに車を回すように言った。
「ベルモット、お前もコイツと乗れ。」
実物を目の前にして思う。
こんな事のために資金を集め、物を作るくらいならもっと別の意味で名を刻める様なことが出来たんじゃないかと。
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