第5章 “悪夢”
ーーーッーー!
「はぁっ…はぁっ…っ」
嫌な夢を見た気がした。
胸にくるいつもの痛みに服を掴みながら息を整えようとする。
痛みは直ぐに治り、今度は自分の肌に纏わり付いた服に気持ち悪さがして目を向けた。
どのくらい汗をかいたのかと思えるほど濡れている。
ベッドを出て工藤邸の風呂場に向かうとドアを開けたところで沖矢さんが鏡に向かっていた。
目を合わせたが彼の存在を気にせず服を着たまま湯を出して風呂場で服を脱ぎ、戸を少し開けて服を出す。
すぐに戸を閉めてそのまま風呂を済ませた。
風呂場から出てくると私の服を用意してくれたらしく、新しいものが置いてあった。
キッチンに向かうと沖矢さんを見つけて服を用意してくれたことにお礼を告げる。
「…デートのお誘いをするつもりでしたが、
その様子では無理そうですね。」
コーヒーカップを持ったまま平然と話し出す彼に少し休む時間が欲しいだけで、そのあとは動けると話した。
私に紅茶を差し出してくれる沖矢さんにどこに行くつもりなのかと尋ねる。
「東都水族館」
その言葉に紅茶を飲もうとして伸ばした手が止まる
「…近くの廃ビルですね。」
「いやどこがデートスポット?
感覚バグってるよ。」
関係あるのか無いのか分からなくなる事を言われ、私の感覚は引き摺り戻され普通に言葉を発していた。
紅茶を一口飲むとある事を思い出した。
「…その廃ビルに行くのは良いんだけど私は同行出来ない。港で荷物を受け取る必要がある。それと、下準備をしておく必要があるから幾つか移動する。」
「…デート兼にしたかったのですが、仕方ありませんね。」
「せめて別々にしてから誘え。
あと、念の為に伝言を。」
「…。」
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