第5章 “悪夢”
壁伝いに時折手や身体を付いて、ゆっくり進んでいると赤井さんの姿が見えた。
すぐに手を貸そうとしてくれたが
今はそれを取っても“厚意”は受け取れる気はしなくて、その手に“来るな”と睨みつけた。
阿笠邸のドアを開けると直ぐに博士が手を貸してくれた。
そのままベッドに行くまで支えて貰い、身体をベッドに埋めると充分疲れた身体は簡単に意識を手放した。
ーー…聞こえるーー
重い羽が高速に回転している音がする。
その音が余りに煩く他には何も聞こえない。
目を開けて固まった。ウォッカが私の腕を掴み、ヘリから落とそうとしている。
殆ど落ちそうになっていると、私の背中側から何かが飛んできて、それは
爆発した
その爆風に巻き込まれ私の身体も浮くがヘリも少しバランスを崩したようで私の前に現れたローターが視界に映る
ドンッ
低い銃声と共に私の左胸とローターを撃ち抜いた弾丸をゆっくり目で追って、生暖かったそれは身体を伝う頃には冷たかった気がした。
息が、出来ない
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