第4章 螺旋
橋の上までくると後部座席の方からこちらに向かって発砲されたが当たるわけもなく、どうしたものかと考えを巡らせた。
直後、車両が向きを変えこちらに向かってきた。これは、彼女の意図した事だろうが周囲を巻き込む事も、ましてや人質に危害が加えられる訳にもいかない。折角顔を出さない様にしてくれたにも関わらず何も出来ずにいると運転席側の窓から手の平が見え、“下がれ“と合図してきた。減速させハザードをつける。急いで車を確認に車外へでると、彼女は先の無い分岐点に突っ込み、ギリギリで止まった。
ーーー息を呑んだ。ーーー
彼女がゆっくり運転席側から降りてくる。
と、車体の後方が少し浮き落ちるか落ちないかの正に瀬戸際。重心が変われば中にいる人間は確実に車と一緒に落ちてしまうだろう。
風間に連絡し手配して貰うと直ぐにサイレンが聞こえた。
「ご無事で何よりです。」
彼女に声をかけるがやはり彼女からの返事はなく、思ったことを続けて言った。
「運転、お上手ですね。」
「では今度ドライブに行きましょうか。私の運転で。」
意外な言葉が返ってきた。驚いていると、聞いたことのないモーター音が聞こえた直後、白い煙が辺りに立ち込めた。
「予告も出さずに申し訳ないのですが、彼女は頂いていきます。それではご機嫌よう。」
何が起きたのか分からず、視界が晴れるとまたも、彼女は僕の前から姿を消した。
ーー今日はよく攫われる人だなーー
上空に怪盗キッドの姿を捉えてこの場を後にした。
.