第4章 螺旋
急ハンドルを切り、車体の向きを変える。
向かい合う様な形を取り速度を上げた。
前がギリギリ見えるかどうかの位置まで
運転席の中に潜り込見ながら、運転席のパワーウィンドウを開ける。
自車をUターンさせた事によりRX7との距離は更に縮まった筈だが降谷さんが撃てずにいるところを見るに
人質、私の事を考えていてくれているのだろう。
仕方なく姿勢を戻し、周囲を確認している間に、
後ろに張り付いたままの降谷さんの姿を
この3人は捉え追いかけている事に気付いた。
橋の袂には丁度新しく分岐点を作っているポイントがあり、
その先はまだ作られていない道の先が崖の様になっている。
さっき開けたウィンドウから犯罪者共には見えないように
手で“下がれ”と伝えると
RX7に察して貰えたのか減速しやがて停車させた。
その様子をずっと見ていた犯人共は
次に起きる事に気付いていない。
サイドを引き、突然停車させたRC-Fの内部では
前方に犯人共が顔を打ち付けられていた。
運転席のドアを開け、降りると荒々しい声が
聞こえるが、彼らの状況は既にどうしようもなくなっている。
「…動いたら落ちるぞ。既に落ちそうだが。」
まだ出来上がっていない分岐点ギリギリに停車させた
RC-Fはヤジロベエのようにゆらゆらとゆっくり動いている。
「ご無事で何よりです。」
安室透の声が聞こえた。
現地点では私はどのくらい安室さんと関わっていたんだっけと
考えているとサイレンの音が近づいてきた。
「運転、お上手ですね。」
「では今度ドライブに行きましょうか。私の運転で。」
悪びれることもなく返事をすると、
聞いた事のあるモーター音がした。
直後、白い煙が辺りに立ち込める。
この状況は何度も見たことがあるため
次に何が起きるかも察しはつく。
身体が持ち上げられる感覚がして目を閉じた。
「予告も出さずに申し訳ないのですが、
彼女は頂いていきます。それではご機嫌よう。」
もう地上は遠いのだろう。待てと叫ぶ降谷さんの声は
随分小さく耳に届いた。
.