第1章 手順
流石に少し恥ずかしくなって彼女の身体をひょいと持ち上げた。咳払いをし、座り直すと彼女も横に座った。
「俺の正体は誰から?」
「誰も。私の推理。」
推理?有名な探偵共を差し置いてこの子が?正直それは信じられない。
「手伝わないと警察に言うのか?」
「警察に言わずに青子ちゃんに伝えるわ。」
「…余計悪いつーの。」
「だからよ。」
全部知っているのとでも言いたげなその顔に何の不信感も無くなってきた。
「何が望みなんだ?こんな高校生に。」
「君の使う道具の内、1つだけ私にも同じものを作って欲しい。ブレスレットの形で。」
ほー?道具の事も知っているのか。
ああ、それからもうこの口調で話す必要はないなと呟いた。
ゆっくり立ち上がる姿にどっかの探偵の姿が一瞬だけ重なって見えた。
襟元に手をかけ反対の手でパーカーのポケットに手を入れる彼女は、少し不思議な雰囲気を漂わせている。
「快斗くんの携帯、教えてく欲しい。私のは訳あって今は使えないから。使える様になるか、何処からか電話して伝える。」
曖昧な言い方だな、質問にはすぐ返答をくれるのに。
ーー少し試すか。
連絡先を書いたカードを見せ、手品を披露する。5枚のカードを彼女の前に差し出すが、彼女は自分の手のひらを俺に見せてきた。
ーーバレてるな。ーー
彼女の頭の後ろに手を伸ばしフードの中からカードを取った。
彼女は受け取ると、俺の顔をじっと見てきた。
直後また何か耳打ちされるのかと動かずにいると、頬に柔らかいものが触れ、同時にリップ音が聞こえた。
すると彼女は連絡すると言い残し、正門から出て行った。
自分の頬を触る。名前も聞きそびれたのにまた会える事を確信していて口角が上がる。
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