第4章 螺旋
何も答えずに振り向きかけたその時、右側の方で爆発音がした。
爆風と砂埃で前が見えず防御姿勢をとると誰かに腕を掴まれ、
すかさず首元に刃物を当てられた。
私は今何らかの犯罪に巻き込まれたんだなと状況を飲み込んだ。
「彼女を離せ!」
砂埃から垣間見える向こうには銃を真っ直ぐ構えた
降谷零の姿があった。
ーーこれは…
…最高にカッコイイのではーーー
不謹慎だと言われようが
自分の状況を理解していながら楽しくなってしまう
口角が勝手に上がっていくのを感じながら見られない様に俯いた。
怖がっているように見えればそれでいい。
その体制のまま後ろに引かれ、逃走用に準備していたのだろう
運転席の後ろに乗っている仲間が運転席に向け銃を構える。
その運転席に乗るように催促された私は
素直に乗り込み行き先を聞く。
「…どこに向かうの?」
「とりあえず車を出してあのサツみてえな男を撒け。」
車を発進させ、大通りに出ると近くに停めていたのか
直ぐ後ろに白のRX7が見えた。
「おい!もっと速度を出してあの車を撒けつってんだよ!」
速度を上げ、言われるままに従う事にした。
ナイフだの銃だの突きつけられる中この状況を私は今
ーー…降谷零と
カーチェイス…!ーーー
最高に楽しんでいた。
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