第4章 螺旋
「どーしたの?」
もう一度聞いてみる。
喋ろうとしているが言っていい事かどうかに
迷っているようで何故話せないのかが理解出来そうになかった。
「…つ、」
暫く待っていると詰まるような声が聞こえて
何を言いたいのかは察した。
ただ、こういう哀ちゃんの姿は私には可愛い子供にしか見えない。
「つ?」
俯いて喋ろうとしている彼女に聞き返す。
すると、顔を上げ見つめ合う形になってしまった。
自分の口角が思わず上がってしまい、哀ちゃんの目が
すっと半分くらいになり、察している事を悟られてしまった。
「なんでもないっ!」
怒ってしまった哀ちゃんの腕を掴み、引き寄せると
ぎゅっと抱きしめた。
驚いた顔をする哀ちゃんに
「今度は一緒に出かけようね」
笑いかけた。
早く行きなさいよと追い立てられるように言われて阿笠邸を出た。
携帯を出して画面を確認するとまた直ぐポケットにしまって大通りを目指した。
脇道を通った方が早い事に気付き、進み始めると後ろから
「こんな所でお会い出来るとは。」
この声は安室透だ。
「…。」
「病院でお見かけしてから心配していました。あの時あなたが居た場所に血が付いていたので、怪我をなされているのに無理に退院したのではないかと。」
「…。」
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