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D.World.

第4章 螺旋






「ジェイムズさん、ここには居られない。
博士の家までお願いします。」

ジェイムズさんは何も言わずに部屋を出る用意をしてくれた。
部屋を出てふらついているとジェイムズさんが肩を貸してくれる。
歳をとっているように見えるが現役で
FBIにいる事と筋肉のつき方が違うのも伝わって逞しさを悟った。
角を曲がり進むと“お茶会”があった部屋なんだろうか
犯人の声が聞こえる距離になった。
自供したあとなのか、


「でも、残念です
バタフライピーには解毒作用もあるから選んだんですよ」


“バタフライ”その発言にピタリと足を止めてしまう。
ジェイムズさんは私に合わせて止まってくれる。


「もしかしたら、私の中で燻るドス黒い殺意を
犯行前に浄化してくれるかもしれないと思って。」



爪が長かったのか、自分の手をぎゅっと
握り過ぎていてポタポタと血が流れた。
血の様に自然に自分の口からも溢れ出ていく


「…“甘え”んじゃねえ。」

今起きている事全部に腹立たしくて

「お前は大事な存在を失った。」

一度出た言葉を止めようとさえ、思わなかった。

「でも彼等は“母親”を失った。」

こんな奴等の為に私は何に悩んでいるんだ。
実際に自分が手を下した訳でもないのに何で
辛くなって苦しいんだ。

「目には目をと言って人は堕落する。
そんな奴が、そんな事にも気付けないのが
“母親”に成れる訳、無えんだッ」

酷く冷たい言葉を吐き出すと突然襲って来た胸の痛みに悶えた。
ジェイムズさんが察してくれて殆ど浮かせながら連れて出てくれる。
後方からは犯人である彼女の啜り泣く声が聞こえた。



「…大丈夫ですかな?」

車に乗せられながら声をかけられた。
苦しさで喋れない状態でいるのに話しかけてくるジェイムズさんが
ただ、意識が有るかを確認していたんだと気付いたのは
工藤邸で眠りから覚めた随分後だった。


重い身体を起こし、ベッドから出ようとすると足がもつれた。
そのまま地面に叩きつけられる。


「…またですか。」



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