第2章 “才能”
「…ほォ?」
沖矢さんの見た目で赤井さんの声って目の前で見ると奇妙かもしれないな。
「…いいのか?俺に話して」
「これが赤井さんの言う“メリット”で構わない。」
赤井said
彼女の言う“メリット”とは恐らく自分の身に起こった事を俺に話す事で“自分の手の内は隠さない”という事だろう。
「それで、渡したいものって?」
首を傾けながら聞いてくる彼女に
「以前渡しそびれていた物が昨日出来あがってな。しかし、見事なスライディングだったな。」
手渡したそれを受け取りながら見られていたのか、と苦笑いされる。
「ロンドンに行くと思ってたが、そのままフランスにも行ったのか?」
「…会う必要があったんだ。この道具を作ってくれる人に心当たりがあってな。」
彼女の右手首に嵌められたブレスレット、バングルといった方が正しいか。華奢な身体には少し似合わない太めのバングルを見せてくれた。
「これは射出型ワイヤーになってる。まぁ機能はそれだけじゃないが、このワイヤーを阿笠博士の玄関ドアに飛ばした時、哀ちゃんが出てきて。それでワイヤーを外したは良いけど自分はバランスを失ってね。」
「なるほど。…しかし走るよりその選択をしたという事は、何かあったんだな?」
「…安室透がポアロにいた。」
それの何が急ぐ理由になるのか分からず首を傾げた。それよりも、見つかる事が駄目だったような発言に違和感を感じた。
「安室透がポアロにいた事、私がタイムリープした事がきっかけだったら、バタフライエフェクトが起きる可能性がある。」
言っている事がどんどん分からない内容になっていく状況に、自覚が無さそうな彼女を見る。
「…お前は言葉足らずだな。
俺は全部知りたいと思っているわけじゃないが、お前に協力している身だ。
説明してみろ、時間がかかっても。」
「分からないな。なぜ理解出来ない?」
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