第2章 “才能”
「どうしたの?どこか痛む?」
哀ちゃんが再び私の顔を覗き込む、コナンくんたちが必死に守ろうとするのも分かるなと思いながら、しかしコレを今言うわけにもいかないかもしれないと考えた末、
「…あまりの美味しさに衝撃を受けまして。」
嘘だ。まずい。正直、つらい。
食材が、勿体無い。
なんか悲しくなってきた。
「…。」
哀ちゃんがポケットから携帯を取り出し、私と一緒に自撮りした。
そのままスッと私に見せてくる。
「…随分美味しそうに食べるのね?」
どうみても美味しそうに食べていない私の顔が写っていた。
「と、とりあえず、この自撮り欲しい。」
「もっといい写真にしなさいよ。」
間髪入れずに哀ちゃんのツッコミが返ってきて楽しくなった。
そうだ、と突然沖矢さんが思い出したように私を見て話し出す。
「起きる直前、“会わないと”って言ってましたが、今度は誰に会いに行くんです?よければ送りますよ。」
と優しく言ってくれるが起きる直前の事を覚えていない。
「わからない。とりあえず、コナンくんに会わないといけない事くらい。」
「そうですか、ではその前に渡したいものがあるので隣の家に来ていただけますか?」
なんだろう?と思いながらも頷いた。
肉じゃがの皿をそっと奥に少しだけ押した。
哀ちゃんにこっそり味直しとくわと言われ、うるうると感動した目で見つめて哀ちゃんの手を握り何度も頷くと哀ちゃんは笑った。
哀ちゃんと博士と別れた後、沖矢さんの後ろをついて行き、工藤邸に入るとガチャっと鍵を閉めた音が聞こえた。
「…さて、教えていただきましょうか。
あなたは僕が誰か知っているようだ。
どうして、知っているんです?」
ゆっくり振り返る沖矢さんの姿に何を今更と思いながら近付き、喉元の変声機のボタンがあるだろう付近を押してみた。
「赤井さんには会った時言ったよね私は違う世界から来たんだ。全部知ってる。それをどうこうしようって思わないよ。」
沖矢さんの見た目をした赤井さんは黙って私をみている。
「それより寝込んだタイミングだと思うけど、多分“”タイムリープ“”した。」
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