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D.World.

第2章 “才能”






助手席側を開けると彼女はそっと乗り込む。運転席に座り、彼女に行き先を尋ねると彼女は毛利探偵事務所と短く答えた。
車を発進させ少し経ってから彼女に“タクシー代”をいただく事にした。

「では、質問に答えて頂きましょう。あなたはどうして僕のことを知っているんです?」

彼女は向きを変え、背もたれの部分に肘をつき
頬に手を当てて口角を上げて僕の方を見ている。彼女の背景は街の明かりで照らされ、赤い色のライトがあったのか一瞬だけ頬が赤く見え、先程とはまた違う色っぽさを放っていた。

「…“未来から来た”からよ。」

言葉を失った。冗談で言っているのかどう反応していいか分からず前を見ると信号はすでに変わっている。運転を再開し、次の質問を考えようとすると彼女の方から口を開いた


「もう面倒、一々質問待っても。あなたは警察学校を主席で卒業した優等生。時間は充分あるから沢山考えてくれればいい。一気に話すからよく覚えて。私は“旅人”。でも自由に動けたりしない。自由に行けるのは“実際の場所“だけ。でも今なぜ”此処に来た“のか分からない。推測しか出来ない状態だけど、多分”トリプルフェイス“の貴方と出会う必要があったんじゃないかと思ってる。それとーーー」

毛利探偵事務所の向かい側で車を停めハザードをたくと彼女の手が僕の手に近付く。
指の間に彼女の細い指が触れ、絡まるのかと一瞬鼓動が止まるが、彼女の手はそのまま行き過ぎ、僕の指先に彼女の手首の位置にきた。
目を合わせられたまま、視線を逸らせずにいると

「私には脈がない。」

彼女の声にハッとして指先に神経を集中させたが直ぐに彼女の手は離れてしまい、助手席のドアを開け彼女は車を出た。

「待て!」

急いで車を出て彼女を呼び止めようとしたが、
彼女は既にその場に居なくなってしまった。
目の前にはポアロと毛利探偵事務所。
また突然居なくなった事を彼女の話と合わせて考えようと、運転席に身体を戻した。
不意に携帯の時間を見ると22:22を表示していた。携帯を置き、車を発進させる。

探偵になれば此処で彼女に会える日が来るかも知れないな。




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