第2章 “才能”
「送って欲しい。タクシー代として着くまでの間、君の質問に細かく答えるとしよう。」
彼女は握ったままの手を離す事なく歩き出そうとした。
「今日は違う所に停めたよ。」
立ち止まってこちらに振り返る彼女がきょとんとしている。
「なぜ嘘をつく?」
首を傾げて僕を見上げて小さいけれど女性らしい手の力が緩くなる。
ただ彼女にカマをかけどうやって推理しているのか観察しようとしたのだが、一瞬もそんな余裕は無かった。全てを見抜いているかの様な発言とその容姿が余りにも釣り合わない。
ーー立ち止まったなら、普通は考える素振りでも見せるんじゃないのか?ーー
再び駐車場に向かい歩き出した。
不審ー疑わしい事。はっきりわからないこと。
不思議ーそうであることの原因がよくわからず、なぜだろうと考えさせられること。そういう事柄。
最初は不審な手紙。
指定されたと思われたBarに何日も通う不釣り合いな女の子。
更に彼女はスコッチをストレートで注文して特に酔う様子も見せず店を後にする。
一度後を尾けるつもりで店を出たが、出てすぐの所で彼女の姿を見失った。
あんな一般的な身体より少し小さい彼女を何分もしない間に僕が見失うなど正直有り得ないと思った。
消えた彼女の事が不思議な子だと思う様に変化した。
.