第2章 “才能”
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捕まえて欲しかったんだよ
お巡りさん
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はぁっと彼は額に手を当てている。
おそらく彼の頭の中で紙に0と書いた事や私がバーボンやベルモットの名前を出した事などに考えを巡らせているのだろう。だが余裕で難題に立ち向かえる優秀な人である事を知っている私としては時間が無駄で小説や気になる事を調べる時間に費やした方がより有意義に感じてしまう。余り待たずしてこちらから彼に話しかけた。
「最後の質問か?なぜ私が君の味方となりうるのか」
「そうだ。」
私の問いにすぐ返事が聞こえた。
「残念だが、それは答えられない。」
思いもよらなかったのか、再び彼が固まり表情を強張らせた。携帯の画面を閉じ、スコッチの残りをくいっと飲み干し、立ち上がりながら耳の近くで続きを囁いた。
「ただ、
君は赤井秀一を取り逃したんだろう?」
ハッとした様子を見せすぐに距離を取られる。
「なぜっ」
「昨日の分と同じ額の筈だ。ご馳走様。」
店を出ようとドアの近付く私の手首を彼が掴んだ。
「お前は何者なんだ。」
目を見て言葉を聞いたが本気で言っている様だ。なぜわからないのかと首を傾げる。
「“君の味方”だ」
腕を振り解き、店を出た。
月を見上げ夜風に当たって携帯を見ると21:56の表示。どうやらようやく戻れるようだ。
だが自分の視界はまだ歪まないし、そこからどうしたものかと考えていると、
彼が出てくる音が聞こえた。が、視線をやらずそのままでいると彼が話しかけてきた。
「僕ばかりが知られていて僕は何も知らない。教えてくれ。」
素直な物言いに口元が緩んだ。
「何を知りたい?」
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