第2章 “才能”
「組織を潰したいんだろう?」
彼の瞳孔が微かに開くのを確認するとまたスコッチを一口飲んで彼が話し始めるのを待った。
やがて観念したのか事態が理解できたのか彼は髪を掻き上げため息を吐いた。
その様子から察するにまだ理解出来ていないことが多いらしい。そんなに状況は複雑ではないのに何が知りたいんだと不思議になり彼を見つめた。
「昨日の件、」
ーーなんだ、そのことか。ーー
やっと話し始めたと思ったが、納得いくまで付き合ってもいいかと考え直し、相手が全部言い終わる前に話し始めた。
「簡単な状況判断に過ぎない。店の奥で見掛けない男が額に汗をし落ち着かない様子でいた所合流した女がハイブランドでシめていれば相手の男とは到底釣り合わない。男が横を走り去る時見えたんだが指先が変色していた。どうせ“つまらん薬”にでも手を出していたのだろう?女も馬鹿だ。悲鳴を上げなければ自分が売った側だとはバレなかったものを。」
悲鳴を上げずともハイブランドで固めていれば支払いが滞り困る事になるのは自分だったんだろう反射的に悲鳴を上げてしまったんだろうが犯罪に向かない奴等だと脳内で片付けた。
つまらない話になったと思い携帯を開き視線を落としたが、その様子を彼はじっと見ている。
「僕の車の事は?」
それもつまらない話だが、さっきよりはマシな質問だ。携帯を操作しながら話した。
「昨日は雨が降っていた。あの水量と服が濡れた箇所、飛沫痕ではないが雨が服に当たった痕や、ここから近い駐車場、君の身長と足の長さを計算すると、この店を左に出て最初の角を左折、そのまま直進50mくらいの位置にあるコインパーキングに停めたんだろう。あそこは車上荒らしが現れる現場でな。」
そこまで言った後は書き終えた携帯のメモ画面を見せた。
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