• テキストサイズ

D.World.

第2章 “才能”





「いや待たせたのはこちらだ。ありがとう。」

雰囲気で悟っていただろうバーテンダーがそっと差し出してくれた事に礼を言い、スコッチを一口飲む。
バーボンが今日はもう戻って来られないだろうと思いながらふと彼が居た席に目をやるとグラスがまだ置かれた状態だった。
自分に出されたスコッチをくいっと飲み終えると席を立ち、さっきの彼は戻らないだろう彼の分は私が払っておくと伝え、自分の分と彼の代金を払い店を後にした。

ーーこれでやっと帰れるのかーー
そんな事を考えたのも束の間、再び視界が歪み最早自分の中では恒例と化した現象に目を閉じた。

目を開けると先ほどと同じ光景が見える。
携帯を確認すると20:48。そしてまた1日進んでいた。もう1週間、太陽を見ていない私は大分疲れたと思いながらも再びさっき出たBarの扉を潜った。

だが、これまでと変わった事が目の前に広がった。
いつも座ってる席に彼の姿が見えた。
近づくと彼は立って席を譲る仕草を見せ、彼は私の前に座った。

「色々聞きたいことがある。」

彼が話し始めるが私はバーテンにこちらに来る様手を上げた。

「はい。いかがなさいますか?」

「私にスコッチ シングル ストレート
彼にはバーボン ダブル ロック」

バーテンダーが対応し終わるまで彼と相席の状態で沈黙になる。が、私は携帯の画面から目と手を離さずにいるため、正面の彼は少し苛立ちを見せ始めていた。

お待たせしましたと差し出してその場を離れる。差し出されたスコッチを私が一口飲むと痺れを切らしたのか彼が話し始めた。

「僕の正体をなぜ“ただの一般人”が知っている」

その様子に私は面白さが込み上げてきた。携帯の画面を閉じ、膝に肘をついて彼を見た。

「いい“選択”だな。」

彼は私の言動が理解できない様でそろそろ苛立ちを見せそうになっている様子。

「その口調、“安室透”以外の人物として私に接すると決めたんだろう?」

全く予想出来ていなかったのかさっきまでの表情は一変し、彼の目が見開かれた。

「私はバーボンかゼロにしか用が無いんだ。正直、ベルモットに接触したいが為に君の味方を買って出ている。」

何が起きているのか何を言われているのかを理解できないのか、どう反応を返せばいいのかが分からないのか、彼は固まったまま動かずこちらの話を聞いている。




.
/ 223ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp