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D.World.

第2章 “才能”





突然、視界が歪み始め思わず目を瞑る。

何が起きたのかただの酔いか、立ちくらみか、と思い一度、目を開け携帯を確認すると
20:48の表示。
ーー日付が進んでいる。ーー

私が赤井さんに車で跳ねられた時期よりも前に来ている時点で時空を超えて過去に戻っている事は理解が出来たがその理由は携帯に現れた内容の事だろう。そして今の状態を察するに、
どうやら”超えた“らしいな。
これは、彼が現れるまで繰り返すしかないのか?とため息をつくと、さっき出たBarの扉をまた開いたのだった。


そんな日が3日続き、4日目にはもう注文せずともスコッチが出てくる様になった。
そして6日目、”いつも“の様にウェイターがグラスを持ってきたが口を開く動作を感じ取った。

「こちら、あちらのお客様から。
バーボンです。」


やっとかと深いため息を吐き、バーテンダーに下げる様伝えると、ではいつものをお持ちしますと丁寧に対応してくれた。その様子を見ていた“あちらのお客様”がこちらに近付いてきた。

「座っても?」

と椅子を引きながら話かけてきたので、携帯を操作したままこう返した。

「来るのが遅すぎたんだ。」

と話し始めると彼の行動はぴたりと止まりこちらを見ている。その様子に流石にこちらも携帯から目を離し彼を視界に捉えて淡々と伝えた。

「座るのはやめた方がいい。君がRX7を停めた駐車場は最近車上荒らしが横行している駐車場だ。なるべく早く戻るべきだ。それと私は組織の人間でも無ければFBIでもないただの一般人で“”君の味方“”ができる立場にいる。出来れば協力したいんだが“”選択“”を間違わないで欲しい。更に、」

屈みかけた体勢の彼の胸元へ手を伸ばしネクタイを少し引っ張ると彼の顔がより近くなる。

「今から起こる問題に君は対処しなければならない。」

言い終わるかどうかぐらいのタイミングで店内に女性の悲鳴が響いた。
彼の耳元で告げすぐに手を離すと彼は何も言わずこちらを見てきた。
その直後、彼の横を男が出入り口へ走りそのまま出ていった。

「私は急がない。100m12秒の早足なら捕まえられるだろう。」

それだけ言い終えると携帯の画面に再び視線を落とした。彼は聞きたい事がありそうな顔をしていたが直ぐに店を出て逃げた犯人を追った様だ。

「お待たせ致しました。スコッチです。」




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