第2章 “才能”
阿笠said
「博士、暫く匿って欲しい。」
「構わんが、それよりまず先に手当じゃな」
大丈夫だからと言われるが、
自分の身体の事をあまり気にかけていない。
この子はどうしたもんかのぉ。
それにそんな風に言ったら哀くんが、
「“匿う”ってどういう、あなたが慌てて来たのって!まさか、組織のっ」
ほれ。言わんこっちゃない。
彼女に目をやると、眠ってしまっていた。
哀くんにシーと自分の指を顔の前に持ってきて静かにする様促し、彼女を見せると納得したように黙ってわしの後をついて来た。
とにかく、ベッドに横たわらせ怪我の様子を見ようとするが、彼女はさっきあれだけ派手に滑って来たのにも関わらず擦り傷も何一つ無かった。
驚いたが、ならば今は寝かせてやろう。
そう思い、ベッドを離れようとした時、彼女の携帯が鳴った。彼女のポケットを探り、携帯を探し出すと表示されていたのは
ーー着信ーー
哀くんがひどく怯え固まっている。
しかしこれはどうしたものか、ロックが外れ出れる状態にあると言うことは出ても大丈夫なのではないか?と考えた末、わしは
「もしもし?」
電話に出た。哀くんは後ろで何やってるんだと言いそうな剣幕で怒っているが、電話から聞こえる声はなく、切れたのかと思うほど静かだった。
「?」
よくわからず一旦耳から電話を離し、携帯画面を見るとそこには
“彼女の意識は此処にある。通話を切らずそのまま彼女の枕元に置いて欲しい”
とだけ書かれていて、わしは得体の知れないこの携帯を指示通り彼女の枕元に置いて、哀くんと共に部屋を出た。
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