第20章 世界
しかしそれは彼女から手を離す行動で、彼女は
その脚を振り下ろして来た執事服を着た男に
抱きとめられていた。
ガタンという音と共に入口が閉じ、船が出航される。
その間、彼と身動きを取らずにいると
執事は彼女から手を離し、此方へゆっくり近付いて手の平を見せて来た。
車の鍵を渡すと彼は船内のどこかへ向かって行ってしまった。
ーーどこかで会った事があるような気がするんだがな…ーー
執事の姿を思い浮かべながら過去にあった人間を思い返し始めた。
「この間とは違う船、ですか?」
「!」
降谷君の問い掛けに対して、珍しい事に彼女が驚いている姿が見れた。
「よく分かったね!私は船に興味無いから全部同じに見えるんだよね」
何故か照れながら笑い始める彼女を可愛らしいとは思ったが、何故照れているのかは誰も分からない様子だった。
「取り敢えず、行こっか」
あっちと指を刺され、階段を登る彼女の後を3人で追う。
船内から船外へ出て、さっき外から見えていたテラス席に着くと先程の執事が出て来て
オレンジジュース、珈琲、紅茶をテーブルに置いた。
誰が何を飲むかを把握している。
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