第1章 手順
有希子さんに手を掴まれ、出口に促されていると沖矢さんが有希子さん、と呼び止めて私を指さす。
「ん?あーあ、そうね。お土産何が良いか聞いてきてー?」
と言われそのまま頷いて有希子さんと繋いだ手を離し、沖矢さんに近付いた。沖矢さんが少ししゃがんで私の身長に合わせてくれる。
「(FBIからの支給だ。何かと不便かもしれないが助けが必要になったら呼べ。)」
懐からクリップに挟まれたお金を出して渡されながら哀ちゃんが不審がらない様に、お礼を短く告げ、その場から離れた。
空港に向かう間、有希子さんに質問攻めにされるが、それを止める優作さんもしばしば聞きたいことがあるようで、止めるどころか私の返答を促す発言も時々された。
その質問の殆どは当然答えられる筈もなく、5日かけて養った私の体力はあっという間に失われ、飛行機に乗った直後、また気を失った。
ーーどうやら私は、この世界に来る前の時よりずっと体力が少なくなってしまっていて
何かに集中する事で極端に消耗するようになっているらしい。だが、癖は治らない。一定の空間とその範囲に居る人間の仕草行動言動はこの世界に唯一私が求めたーーーー
優作said
「ぐっすり眠っちゃったわねー。悪いことしちゃったかしたかしらん?」
しょんぼりした様子の有希子が彼女の寝顔を見ながら不安そうに話した。
「大丈夫だと思うよ。この子は体力が少ないんだろう。それより、彼女は大分キレる存在だな。新一といい勝負かもしれんぞ。」
それを聞かせると有希子はぱっと明るい表情になり楽しみだと話した。
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