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D.World.

第19章 “漆黒”









放たれた弾丸は彼女を突き抜け
ゆっくりと倒れていく彼女からは
赤い血が止めどなく溢れていた。


ーーどうして、--


脈も無く、手を切っても何とも無いと
見せてくれた事と今起きている事を比べて
力無くその場に膝をつくと執事の恰好をした人が近付いてきた。

「……」


無理矢理僕の顎と頭を押さえ彼女へ視線を向けさせられると、そこに広がっていた血溜まりは無くなっていた。


「ぇ…?…」


驚いて執事に顔を向けるとその人はトランプカードを差し出し、いつの間にか港に着いていた船を降りるように促した。


指示に従いながら手渡されたカードに目をやる。
元々はキッドのものだったのかもしれない。
黒と赤の模様が入っている。
カードを裏返すとそこには彼女の字でこう書かれていた。




ーーーーーーー
これで、記憶を貴方が持ったまま戻った時間軸ができた。ありがとう。
お礼に、まだ試作段階だけどRX9を試乗して帰って。
私の事はそこの執事が面倒見るから大丈夫。
“戻ったら”連絡入れる。

PS:家までの距離しか乗っちゃダメだよ。私もまだ運転してないんだから。
ーーーーーーー





顔を上げて港を見ると出航直後に燃えた車は既に無く、代わりにライトに照らされた見たことの無い車がそこにあった。

誰が用意したのかは分からないが彼女の話した“要求”の一部なのだろう。
彼女にモノを要求される方はたまったものじゃ無いだろうな。PSと書かれた部分に笑いながら船を降りた。


車に近付くとキーを手渡される。

「…彼女は、いつ頃目覚めますか…?」

渡してきた手の主、執事に問うが彼は答える様子を一切見せない。


「…以前、此処にいたんですよね?…また、10日くらいでしょうか?…」


聞き方を変えても表情一つ変えず、ただそこに立っている。

これ以上は何を聞いてもその態度を貫かれるだろうと察して車に乗り込み、その場を離れる事にした。








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