第18章 合図
「…さて、此処にいるのには訳がある。
今のこの時間軸は危険なんだ…だから
私は“超え、戻る必要がある”」
執事の様な格好をした人が僕の銃を取り上げた。咄嗟に反応したが間に合わず、奪われてしまう。けれど、その銃はすぐ僕の手に戻される。そしてその人は僕から見て、彼女の後ろに移動する。
「沖矢さんもそうだけど、コナン君も。
安室さんも、私は“頼る事にした”。
…その銃で
ーー何を言われるか分かってしまう
その瞳は、綺麗だと思った
鮮やかな水色の奥に赤色が輝いて見える眼ーー
「 私を 殺して 」
奥歯を思い切り噛み締めた。
出来る筈が無い。
なぜそんな事を言うのか理解できない。
((“正直、理解できない”))
その言葉自分が言った言葉……
ーーまさか…ーー
警視庁の駐車場であの時聞いた彼女の秘密を思い出した。
彼女が近付き、銃を持つ手を両手で押さえて自分自身に向けさせる。彼女はその綺麗な瞳を真っ直ぐ僕に向けるが、直視出来なくて顔を背けた。
「ッーー…出来ないッ!」
「…例えセーフティポイントに居たとしても、“限界点”を超えてしまったら“戻る”事はできない。」
「それでもッ…この手でキミを撃ちたくない」
「私が変えたい未来も、貴方が守りたい日本も、…“友”も、全て、失う事になってもか?」
「え?」
その言葉に顔をあげ彼女の瞳を驚いて見てしまった。
「…私はずっと、
“悔しさ”と“悲しみ”で“恐怖を断ち切ってきた”
“甘え”も“衝動”も押し殺して。
あなたの志は私の希望
あなたが見たい筈の未来の姿は私の切望
私の“願い”を聴き入れて。」
その瞳は揺れる事なく俺に告げた。
「 “時間はもう無い” 」
誰よりも時間が無いなんて言葉とは無縁だろうに、と一瞬だけ笑ってしまった。
けれど目の前に突き付けられている事で
表情は勝手に真剣なものに戻る。
その瞳に応える様に此方も真っ直ぐ見つめた。
「 約束してくれ、その“友”に
必ず“会わせる”と 」
彼女が頷き俺が引き金を引いた瞬間、彼女は此方に笑顔を向けた。
18章🔚