第17章 齟齬
いつの間にか周りに居た客は帰っていて会話が聞こえた事を軽く謝りながら私と沖矢さんのテーブルまで歩み寄ってくる安室透が話しかけて来た。
「……」
どんなダンスだろうと踊れる気がしない。
例えば相手が必要な物なら明らかにコナン君以外身長的に不可能で。
1人で踊るようなものならランニングと変わらないだろう。
データが取れないとなると歯痒さが増す気がしてどんどん顔色が悪くなったのか、安室さんが心配そうに謝ってきた。
「…そんな顔をされるとは思わなくて…」
こっちの台詞だ。そんな顔を見に来たんじゃない。ただ降谷零が安室透として働き、子供に向ける顔が見たかっただけなのだから。
子供とはこういう場合、このまま拗ねるか何も気付けなかった様な顔をするんだろう。
だがもう言葉を発せられる気はしない。
せめて、子供らしくこの身体のサイズを利用しよう。
「……」
テーブルの下に潜り込み、沖矢さんと壁の間から顔を出す。そのまま椅子に座って沖矢さんの指を小さい手で握った。
「…出ましょう。お会計お願いします」
「…ええ。」
沖矢さんが手を引いて外で少し待っている様にと言われた。ポアロのドアにあるガラスからチラッと中を見ると珍しく沖矢さんが安室さんに話しかけていた。
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