第17章 齟齬
お冷とお絞りを持って来てくれた安室さんがテーブルに置きながら私を見る。
「うん!当然!…で、アールグレイ?」
「ご用意致します」
営業スマイルを全力で向けてくる安室さんにお願いしますと言うとカウンターに向かった。
「(なぜ、当然なんですか?)」
テーブルの上を指で優しくトントンと叩いたりサッサッと横に擦る動きをする。
明らかにモールス信号だ。
読めているが、答えたら安室さんに伝わる可能性がある為無視を決め込む。
暫くして紅茶を差し出される。
沖矢さんの前にはアメリカンがイギリス式で差し出される。
それをアメリカ式に直すのかと思ったら縁を上から掴んだ。
茶葉を蒸らしてできた紅茶をカップに注いで飲む。口から鼻に抜ける茶葉の香りを楽しんでいると前側から沖矢さんの声がかかる。
「…美味しいですか?」
「うーん……どうやら、茶葉を間違えたみたいだけど、これはこれでいい。それに訂正されて新しい物を出されても飲めない。」
身体を動かしてこの薬の効能を調べなければ哀ちゃんにデータとして渡せない。
「…昴さん、運動するには何が丁度良いかな?軽く、が良いんだけど。」
「…何でしょうねぇ…ランニングやサッカーなどはしたくないという事でしょう?」
「こう…汚れたり汗かき過ぎるような事がない程度に…」
「ダンスとか…どうですか?」
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