第14章 羈絏
「最も、理由を考えているより身体と頭が動いていて“何故誰もそう出来ないのか”が私にとっては難問だ。
…どんな情報も見逃さなければ全てにおいてそれは守れるのに、人は人の外側しか見えてなくて溢れている情報量には追いつけず、気付けなかったと後から悔いる。そんなのは自身への甘えと傲慢だ。全ての情報を遮断し、己の心のみで動ける人間は後悔などしない。」
滑らかに彼女の口から紡がれる言葉をどういう事か考えようとするが理解が追いつかない。
それはベルモットも同じなのか黙ったままでいる。
充分過ぎる程重い空気が車内に充満した頃
ベルモットの使うホテルに着いた。
「…貴方を組織に入れるよう手筈を整えるわ。」
…何故、そうなったんだ…?
「それは、お断りしますよ。」
彼女はくすくす笑いながら答える。
「でもまぁ、何かあればお手伝いしますよ。」
ベルモットは車からの降り際に彼女に向かって手を振った。
僕は 完全に後悔した
降谷said
ーー彼女は充分過ぎる程、
組織に目をつけられているーー
助手席に移動した彼女を乗せ
また暫く車を走らせた。
「…分かっているのか」
彼女に問いかける。
「どれだけ危険か」
そのまま言葉を続けたが返事が返って来ない。
ーー彼女は後悔するなよと言って車に乗った。
ベルモットが居るのに誘ったのは僕だった。
あの場で別々に去りたかったがそれが不自然に
映ったらと考えた。いや、もしかしたら彼女を
少しでも自分の元で、安全と思える場所でーー
「 気付いたか? 」
突然彼女の声にハッとした。
「何…を」
「私は言ったよ。“後悔するなよ”と。
さっき話した事は安室さんにも当てはまる。
“溢れている情報量に追いつけない”のは
あの場所で“最善を最短で選ぶ”必要性の事。
もしも安室さんが
“自分の側に置いておけば守れる”
と思ったのなら、それは“傲慢”だ。
そして“後悔した”のなら
その行動は“心に従ってないから”だ。
本当は理解していた筈だ。
心の奥では解っていた筈だ。
“今の自分は連れて帰れない” と。」
.