第13章 “× ×”
車に戻り駐車場を出る時、安室さんにポアロの近くで降ろしていいかと確認を取る。
「僕の車をポアロの近くに停めてあるので、
そうして貰えると助かります。」
わかったと答えると今度は2人に変わるがわる自分の好みや気に入っている物などを色々聞かれ、帰りの車内は私への質問ばかりになっていた。
ポアロの前に停車すると、行きとは場所を変えて
助手席に乗っていた安室さんが私に顔を近付け
「“例の件”お忘れなきよう。」と
耳元で囁いてこめかみの辺りに口付けた。
リップ音が聞こえると同時に後方で沖矢さんが車を降りた。
助手席を安室さんと入れ替わる様に沖矢さんが座る。
「ではまた。」
楽し気にしている安室さんにおやすみなさいと言ってその場を後にした。
一度大通りに出ると沖矢さんは不服そうに話し出した。
「本当に海へ行かれるおつもりですか?」
その発言に思わず笑っていると沖矢さんの眉間に皺が深く入る。
「何も、沖矢さんと行かないとは言ってないじゃない。」
その言葉で満足したのか、眉間に入った皺は消えた。
阿笠邸の前に車を停め、沖矢さんと降りる。
「回収に来てくれるんですか?」
「そう。時間と同じ場所に置いておくって伝えてあるから。」
「なるほど。では、自室に戻りますので。」
「うん。おやすみなさい。」
自分も阿笠邸に入り、風呂を済ませた後
朝目覚めた部屋に向かう。
リュックに服を出来るだけコンパクトに仕舞い、
今日買った靴を取り出すとかっこいいフォルムの
ショートブーツが出てきた。
明日、履いてみたいな。
ベッドに潜り込みながら明日の事を考えていた。
13章 🔚