第13章 “× ×”
店内に入ると前回来た時に話しかけてくれた店員さんが来てくれた。
「また来てくれたんですね!ゆっくりしてってください」
適当に挨拶を済ませて店内を見て回る。
ふと、白いベルトに目が止まった。
細めのベルトにはポーチがついている。
ーー今日買った服に合わせやすそう。ーー
それを手に取って女性の店員さんに話しかけた。
「これと、2ミリ4面カット、アズキ、60でシルバーチェーンを下さい。あと、ローファーを注文したいのですが。」
「え?」
店員さんは驚いた様子で顔を上げる。
「ショートブーツでもいいからカッコよく作って欲しいって仰っていた物ならさっき出来あがって明日にでも送るつもりでしたが…」
「………すみません。注文した事を忘れていました。ではそちらも今日頂いて帰りますね。」
笑顔を向けると店員さんから動揺が消え、準備して来ますと奥に入って行った。
「…今のは?」
小声で沖矢さんに話しかけられる。
「分からない。私は今日ここへ来るのが3度目なんだけど、2度目の事は無かった事になってると思ってた。」
「では2度目に来た内容を話したのに3度目に来た事になっているという事ですか?」
声量を合わせて安室さんが話しかけてきた。
「多分。でも他の場所でこういう事態になった事はない。…」
「バタフライエフェクトですか…?」
「いや、どうかな。まだその結論は早期的な気がする。」
「万が一、の事もあります。余り此処へは近付かない方が良いのでは?」
「…必要と感じるものを買って帰ってるだけだから、其処まで心配することではないと思う。」
小声で話していると戻ってきた店員さんにお待たせしていますと言われる。
財布を出して会計しようとすると沖矢さんにそれを鷲掴みにされ
片手で器用に会計をしている。
力強くて財布からお金を出せないでいると
安室さんが後ろでくすくす笑っていた。
「…ありがとうございます。」
納得いかないけど奢られた事に変わりは無いのでお礼を告げる。
沖矢さんも安室さん同様、満足気に笑って
頭をわしゃわしゃと撫でた。
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