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D.World.

第13章 “× ×”









テイクアウト用のカップは以前、博士に置いてもらうよう頼んでいたものだ。この時は哀ちゃんにまるで誰か来て珈琲片手に帰らせるのか、カフェでも始めるのかと嫌味を言われた。


カップに珈琲を注ぎ半分くらいで沖矢さんに渡すと一口飲んでお湯を足す沖矢さんに笑ってしまう。

カップ2つにラテを作り蓋をする。片方を沖矢さんに持たせて袋ともう1つのカップを持って哀ちゃんに行ってくると言うと手を振ってくれた。


携帯を片手で操作し、阿笠邸前に停まっている車体を確認する。

黒のAccord hybrid

ーー運転席下にキー…ーー

指を入れてキーを取り出し、車に乗り込むと沖矢さんも乗り込んだ。

斜め後ろの席に袋を置いてシートベルトを閉める。

「…貴方の…?」

“貴方の車ですか?”と聞きたかったんだろう。聞きかけて多分気付いた

何処に仕舞うのか維持はできるのかそもそもどうやって買ったのか、レンタルなのか。


「レンタルだよ。」

「そう、ですか。」

「行きたい所はある?」


特には。と答えられると、だろうと思ってたと心の中で呟いた。

車を走らせ、ポアロの向かいで停車させて一旦降りる。

「沖矢さんは待ってて。」

「はい?」

どうしてだという顔で見てくるがそれを無視してポアロに入ろうとすると

女性のお客さんが出てきた。

その奥に安室さんの姿が見える。

女性の腕を掴み、手前に引いてカップを上から抑えると

その人は驚いたような顔をした。

「…大丈夫ですか?“蓋が開いている様に見えた”ので、つい。」

女性は私の顔を見て、頬を赤くして大丈夫ですと答えた。

手を離してお辞儀する女性に手を軽く振る。

安室さんに向き直った。

「あのセダンで来たので、運転席の後ろに乗って。待ってる。」

エプロンを指差して車に戻ろうとすると今度は私が腕を引かれた。

「…あの女性「もういいでしょ」

「…。」

確認されようとするその言葉を遮り、顔を上げる。

「誰も傷付いてない。」

私の腕から手を離して直ぐ向かいますと言いながらポアロの奥に行った。


車に戻り、助手席のウィンドウを下げると沖矢さんは

煙草を取り出し火をつけた。




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