第13章 “× ×”
通話を切りると哀ちゃんが食ってかかってきた。
「何考えてるのよ?!」
「うーん。どちらかは断ると思ってたんだ。」
「…確定ね。貴方は人タラシよ。」
「まぁそれは兎も角。」
「状況がわかってないようね」
「いや?分かってる。あの2人は仲が悪い。」
「知ってて何故」
「何故って……面白そうだから」
相当悪い顔をしていたのか、組織の人間を見た後の様な顔をして哀ちゃんが私を見ている。
「さて、何処に行こうかな」
哀ちゃんの視線を気にせず立ち上がり、携帯で車を予約する。
阿笠邸のキッチンで何処に行こうかを考えながら弁当を作り始めた。
沖矢さんは簡単に食べられて手があまり汚れない物が良いだろう。ウィスキーに合うものは苦手そうな雰囲気無いな、牛肉をほぐしてペッパーを多めに、野菜とソースで…ーービーフサンドにするかーー
安室さんは日本食の方が好きなイメージがある。魚の味噌焼きと和物、だし巻き卵と…
ーーセロリの浅漬けにするか。ーー
それぞれの弁当を作って包んだ。
キッチンで弁当を袋に入れていると沖矢さんが入ってきた。
時計を見るとまだ少し早い。
「暇でしたので少し早めに。」
珈琲ミルで深煎りの豆を挽きながら沖矢さんに何か飲むかと聞く。
「貴方が飲むのなら。」
“何か飲むか”を聞いているのに対し“貴方の序でなら”と答える辺り、ブラックしか飲まない事を知っていますよねって言われてる気持ちになる。
「…荒く挽いた方がいい?」
「!」
一瞬驚かれるが直ぐにふっと笑う。
「濃ければお湯を足すので大丈夫です。気にせず貴方はカフェラテを入れて下さい。」
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