第12章 “降谷”
中に入るとこの間の人が声をかけてくれる。
あのカバンは、あれからどうですか?とか不調になれば直せますので。今日は何を?など。珍しくイケメンに目を向けない女性に出会った気がした。
店内を一通り見て回って、先に欲しい物がないかを探す。
革物にもアクセサリーがあるのかと足が止まった。
ーーこのチョーカーも良いけど、頭からすっぽり通せる長めの物も良いな。ーー
選べずに居ると安室さんが後ろから声をかけた。
「この結び方なら、ほら。引っ張って縮めると二重にはなりますが、チョーカーの様にも見えますよ?」
「…。」
二重に紐が巻かれたようになる事で圧迫感を感じ、チョーカーの方がスマートに見える気がする。
「…普段なら迷った時には買わない。安室さんなら、どんなの選ぶ?」
今日初めて安室さんの好みを聞いたかもしれない。
「僕は…貴方になら、シルバーの物を身につけて欲しいですね。」
「……じゃぁ、“2.6以上”“4面カット”“アズキ”“60”で。」
「!…シルバーにも興味があったんですか?あとそれ殆どメンズですね。“1.6”にしませんか?」
困ったように笑われたが、奥から店員さんが種類はありますよと言ってくれる。
革製品とシルバーは相性が良いからあっても不思議は無い。
だが、太さについては話し合う必要がある様だ。
「…せめて2。だめ?」
「…では2にしましょう。」
中性的な範囲で可決した。
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