第12章 “降谷”
ーーかっこいい人はかっこいい仕草が自然ーー
何か名言のような物が生まれた。
車で数分。以前、博士哀ちゃん沖矢さんと買い物に来ていたエリアに来ていた。
駐車場に入る手前であのカバンを買った店が目に入る。
ーー後で行きたい。ーー
運良く近場のスペースが空いていてそこに停めるのはこの人の配慮だろうなと思う。
遠くに停める事なんて何も苦じゃないだろうな。
車を降りると手を差し出される。
その手を取らず、袖を少し掴むと無理矢理手を握られてしまった。
「よく、ラフな服装ばかり見ますが
スカートは嫌いなんですか?」
歩きながら聞かれた事に答えていく。
服に然程興味がない事、スカートなんて履いたら動き辛いと思う事、カラフルなものよりシックなものに惹かれる事、車やバイクが好きな事、ミリタリーにも興味がある事、料理の知識はいつの間にかあった事、音楽や楽器もなぜか色々触れる事、色々な事を聞かれそれに答えていると、いつの間にか安室さんは会計を済ませていた。
ーー?あれ、この人何買ったんだ?ーー
余り考える暇もなく、次の質問が飛んでくる。
あそこで休憩しますか?とカフェを指さされたが、カバンの店の事を思い出す。
「えっと、お疲れでなければ行きたいところがあります。」
「どこですか?」
「駐車場に近くなるので後からでも良いんですけど、革物を取り扱う店に。」
「では、向かいましょう。」
「…?…はい」
ーーなんだ?…いつもより柔らかい気がした。いつもの笑顔になる一瞬、手前に。ーー
駐車場を少し通り過ぎて目的の鞄の店に入る。
この店のドアは少し重くて、両手で押す為この時、安室さんと繋いでいた手を離した。
.