第12章 “降谷”
「…熱くなかったの?それ」
けれど実際に口から出た言葉は全く違っていた。
「流石に、熱かったですね。」
「…気付いてれば温度下げたやつ渡せたかも」
「!…精進します。」
笑顔で返事を返される。
叱るように言ったつもりは無かったが、巻き込まれた立場である以上、この位は許して欲しい。
精進しますなんて言っているが、きっと完璧を求めるんだ。
お客様にホットを提供しないなんてって言いそうだと思った。
RX7に同乗して安室さんの部屋に向かう。
普通に、珈琲かかったままの服で外で居たくないよな。
車で待ってれば良いのかと思ったら部屋に来て欲しいと頼まれた。
車内に居られる方が不安だったのかもしれない。
部屋に入ると以前と何も変わらない様子だった。
入って直ぐ横の冷蔵庫を見て思い出す。
“部下たちが「またお弁当作って下さい」と言っていた”
「…降谷さん。」
「?」
脱衣所の方で服を脱ごうとしているのか顔だけが此方に向いた。
冷蔵庫を指差して
「シャワー浴びて来ますよね?その間に、良ければ。」
確認を取ると、お好きに使って下さいと笑顔を返される。
許可を貰ったところで、いざ。
冷蔵庫の中は多少小鉢にラップをした物が入っているがタッパーで纏められたものも多い。
野菜室にはやはりセロリが入っている。
他の野菜にも目向け、一旦冷蔵庫を閉じた。
頭の中で5、6人分くらいのメニューを考えるがどう足掻いても米かパンだけは自分達で調整して貰う必要がある。
それらを除いておかずだけ作るつもりで必要分を冷蔵庫から取り出す。
15分後
作り終えてタッパーの蓋を閉じ一応冷蔵庫に入れた。
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