第11章 “赤井”
今度は、不安が押し寄せてきた。
ーーこうなる事が分かってるから興味持ちたくないんだーーー
私の心境を察してか否か、沖矢さんがスッと手を伸ばしてきて、
「帰りましょうか。」
と言った。
「ん?」
「?」
お互いに疑問が浮かぶ。
沖矢さんの疑問は私へのものだろう。
私の疑問は複雑だ。
ーー何で今すぐ帰るんだ?普通にデートしたらご飯食べるよな?私が変?何だかんだでもうお昼になりそうなのにこの人が急いで帰りたい理由は何だ?ーーーー
「…その仕草をしている時は何かに考えを巡らせて居る時と自覚していますか?」
沖矢さんが私の指に自分の指で取って話しかけてくる。
「自覚してる。沖矢さんが急に帰りたいって言った理由を考えてた。」
「!………。」
まるで煙草を吸った後のように深くため息を吐き出された。
「ごはん。食べたい。外で沖矢さんと。」
「…。」
素直に話すと今度は固まっている。
ーースナイパーって情緒不安定でもやってられるのか?なんか昨日から不安な事が沢山ーーー
「では、此処へ来る途中にあった所に行きましょう。」
今さっき考えた事が吹き飛んだ。
話しながらも周囲を見て私を気遣いつつ、場所も覚えている。
「貴方が気に入りそうなお店がありましたよ。」
「分かるの?」
「愚問ですね。」
「…FBIの奴等が喋ったな。」
ダイナーの様な店が見えてきて、FBI施設でのことを思い出した。
「実践的過ぎただろう。」
「いや、あれは“実践”だった。」
FBIの施設でいた頃の話を軽くしながら、
店内に入って席に座る。
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