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D.World.

第11章 “赤井”









折角選んでくれているのにも関わらず服がどうより如何に動きやすくするかを考えていた。



3つ目に
レザーのジャケットを取ろうとした沖矢さんの手を掴んだ。

「……?」

「…それは、絶対、いや。」

手を掴んだ私を不思議そうに見るから
しっかり目を見て伝えた。

諦めたのか、そっと手を離してくれた。

ほっとしていると沖矢さんがしゃがみ顔を覗き込んできた。

「選んでみますか?」

「えっと、人のセンスを否定したい訳じゃなくて…」

申し訳なくなってきて目を逸らす。
小さく笑う息遣いが聞こえた。

とりあえずこの2つは買いますねと言って支払いを済ませてくれる。


その姿を眺めて

「……」

ふと、赤井さんの時に着ていた黒いシャツを思い出した。

ーーあのシャツ、袖の所に絞りを作ったら上着に出来そうーーー




沖矢さんの指に触れ、手を繋ぐ。


「…? どうしました?」

「……」


“赤井さんが着ていた黒いシャツが欲しい”


たったこれだけの発言だが
この言葉では変態のようじゃないかとか
そもそも“赤井さんが”とこの場で言う事は出来ない。言葉を選ばないと。


「…オーバーサイズの、シャツなら…」

「オーバーサイズ?」


意味が伝わらず、もどかしさが押し寄せる。

「っ…」

「!」

どうすればいいか分からず、沖矢さんの胸ぐら掴んで引っ張った。

瞬時に判断してタートルネックの部分を押さえ引っ張られるままに近付いてくれる。


「…あ……が着ていた…ツが、欲しい。」


ーー恥ずかしい。何を言ったんだ自分は。聞こえたのか?ーーー

恥ずかしさが限界点を超えていて彼の顔を見る事ができない。

掴んだ服を手放しても、暫く沖矢さんは私に耳元で言われた位置から動かずにいた。

変装の所為かもしれない、沖矢さんの表情と首元からは何も読み取れない。

何分か経った頃、沖矢さんがすくっと立ち上がって口元に手を当てている。





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