第11章 “赤井”
どんな結果になろうと、このまま赤井さんとギクシャクしたままでは居られない。
登録された番号の中から赤井さんに向けて発信を押した。
『どうした?』
「携帯。ありがとうございます。」
『ああ。』
「…。」
『…。』
「…。」
ーー会話が続かないーー
この人も黙ってる。
……分かってるのか?この人
“心底気に入っている”
“失いたく無いんだ”
“お前なら俺は愛せるんだが”
ーー何を自分が言い放ったか
理解してるのか…?
でも、それは自分もーー
『…悪かった。』
突然電話口で聞こえた謝罪の言葉に戸惑う。
「えっ…と…」
それはどういう謝罪なのか
『俺はお前の気持ちを無視した。』
「…。」
『すまなかった。』
そんな悲しそうな声が耳元で聞こえて許せない人間がいたら其奴は、自分の立場を理解していないだけだろうと思う。
「…まったく。狡いですね。
謝り易い状況を作ってくれて
早期解決を望んでくれて
自分の言いたい事は全部言っちゃうし
挙句、襲うって言ったりして。」
『…』
「それは“狡い”ですよ。」
赤井さんは黙って私の言葉を聞いている。
喋りやすくしてくれて、
「…“心底気に入ってる”人が目の前で死んだら
普通ならそれは驚く事ですけど、前に言いましたよね?“世界線を超える”って。」
『…知っていようと「ごめんなさい。」
赤井さんの言葉を遮り、その一言で色々謝ろうとするのも“狡い”だろう。
『…』
「…私も、ごめんなさい。」
2回目は違う意味で謝罪した。
きっと彼はこれに気付くだろう。
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