第9章 贖罪
「あら。また後でって言っても戻らないのかと思ったら、本当に戻ってきたのね」
「哀ちゃん…マズイ事になった…」
さっきのたった2、3時間くらいであった事が押し寄せてきて、自分だけで過ごした5日間の皺寄せなのかも分からず泣きたい気持ちで哀ちゃんに擦り寄った。
「…今更ね。いつも問題しか持って帰ってこないじゃない。今日はそれ以外もテイクアウトしている様だけれど。」
「取り敢えずこれ食べてから話す。」
「好きにしなさい。」
ハムサンドを頬張りながら博士が出してくれたココアを飲む。
久しぶりだなココア。
自分の身体も不思議だ。
お腹が空いているという感覚は無いのに物を食べれば普通に食べられる。味もわかる。
「…で?」
食べ終わってココアを飲むと哀ちゃんが聞いて来た。
「…安室透さんって知ってる?」
「えぇ。」
「…好きって言われた。」
「…………貴方、つい3時間前くらいに」
「言わないで。」
「どーするのよ」
「どーも出来ないよ。好きだのどうのは考えられない。」
「……。」
哀ちゃんは浮気とかそういう話に厳しかった筈。でも私の場合、浮気とかそういう以前の問題。
じっとりと見られているけど本心しか話していない。
「はぁっ。貴方は人タラシなのを自覚するべきね。」
「?」
「…貴方は貴方が思う以上に魅力的に見られているの。」
「へぇ。」
「…いっそどちらかを選んでデートでもして来たら?」
思い切りのいい発言だな。
というか興味無い話だな、と思うも安室さんとはそういう話が出来ているし
沖矢さんとぎこちないままっていうのも嫌だなと思ったが、
「……いやだぁ。」
泣きそうな声が出た。
いや多分、目は潤んでいる。
哀ちゃんがじとっとした目を辞めてくれない。
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