第9章 贖罪
主人公said
急に降谷さんの状態で言われたと思ったら手を離してくれた。
「そうだ、この間の“奢りの件”実行させて下さい。」
“奢りの件”…少し考えて思い出した。ハムサンドだ。
だがさっきから時間が結構経っている。
あと20分くらいか、微妙な時間だな。
「…テイクアウトにしますか?」
「!」
時間を気にしている事を悟られた。
コクコク頷いて安室さんの後ろをついて行きポアロに入る。
「直ぐ持ってきますね。」
梓さんは常連の人と話をしていて楽しそう。
お客さんは少なく、私とその常連さんだけで街の中にある小さなカフェって感じられて落ち着く。
「…また来てください。」
声のする方に向くと安室さんが少し寂しそうに商品を手渡してきた。
ーーそんな顔するな。
居なくなったりしないから…ーー
伝えたいけど其れを周りに悟られない様にするには…
手近にあったドリンクの下にひくコースターを取り、軽く口付けて安室さんのテイクアウトの商品と交換するかの様に彼の胸に押し当てる。
彼が其れを抑えたのを感じとって手を離しポアロから出た。
15分と余裕がある時間で工藤邸を目指した。
降谷said
コースターにキスをしても彼女はリップなどしていなくて色など付かない。
ーーついていないのに、ーー
また暫く会えないと思ってしまった時顔に出てたんだろう。
“洞察力”が良いとは少し厄介だ。
ポーカーフェイスが通用しない。
喜んでしまったのもバレているだろう。
それでも彼女の気遣いは嬉しかった。
ただ、告白を声に出して伝えてからというもの彼女の声が聞けなくなってしまったのを少し残念に思った。
主人公said
「沖矢さん、少しの間阿笠博士の家の方で泊まる。」
「…気にしていますか?」
ハムサンドを持ったまま玄関で沖矢さんの顔を見て話す。
“気にしていますか”は今日の色々な事を指している。
「気にしない方が人としてどうかしてる。」
「…そうですね。」
少しは罪悪感を持って貰いたい。
目的の為に主要な人物たちとはそういう関係など求めていない。
なのに2人は遠慮無く向かって来て。
今日あった事を思い返しながら工藤邸を出て隣の阿笠邸に入った。
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