第9章 贖罪
「…っ」
反射的に身体が動いていた。
彼女は言い終わったかもしれないが
聞きたく無い発言を塞ぐように
彼女の唇を奪った。
覆い被さるように腕を掴み、手をついて。
「…沖矢さん。戻らなければならない。」
「…っ」
「…沖矢さん」
「…」
「…おき」
「…」
聞きたく無いという様に何度も塞ぐが
彼女から出る言葉は俺を静かに呼ぶ声で
変化の無い彼女の瞳も俺を捉えている
「“戻るから”」
何度目かも分からなくなった頃
彼女は違う言葉を発した。
不意をつかれ彼女のワイヤーが伸びて銃を引き寄せた。
胸の所で自分に向けて
撃たせまいと再度唇を塞ぎ銃に手を掛ける
が、彼女は俺を蹴り
距離が離れた所で引き金を引いた。
“行ってくる”
そう言い残して。
ーー実弾が入っていた…?ーー
横たわる彼女に手を伸ばして抱き締めると
さっきまであった筈の彼女の熱は
今はもう冷たくなっていた。
抱き留める腕に力が入る。
ーー何もかも知らないまま
置いていかれる
大事なものは手の届きそうな範囲で
呆気なく消える
なぜ止められないのか…ーー
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