第8章 “痕跡”
「犯人が伸びてるから捕まえておいてって通報してくれない?」
「捕まえたのか?!」
「まぁ。その。…白バイが廃車になったと思うけど。」
「…灰原が怒ってた。」
「……今日はもう、これ以上何か起きてほしく無いかなぁ。」
「…とにかく、連絡はする。」
簡単にお礼を告げ、通話を切った。
バングルの発信機の部分を眺めてやはり思う。
今は、そっとしておいて欲しいと。
携帯から今度は沖矢さん宛にメッセージを出した。
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哀ちゃんに心配ありがとうとお伝え下さい。
犯人は捕まえコナンくんに通報して貰いました。
私は少し1人になりたいので何処かに泊まります。
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メッセージを送ってため息をついた。
この世界に飛ばされた理由を考えて足掻いてるけど
1人で動き続けるのはやっぱりしんどくなる。
少し、誰もいない場所で休息を取りたい。
思えば、誰かの家や部屋に頼っていて
自分の家など本当は此処には無くて。
時折、自分の存在が無くても
この世界は立ち回れるんじゃ無いかと
そんな風に思った。
「こんな所にいたんですね。」
ぼーっとしていて気付けなかった。
背後からかけられた声は
「探しましたよ?」
今の状態では一番聞きたく無い声で
「“ピッキング”も出来るんですね。」
会いたく無い存在。
「…。」
「おや?また黙ってしまわれましたね。」
どうして、いつも
放っておいてくれないの。
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