第8章 “痕跡”
ーーそんな有り難さだけで出来た上手い話、
あるわけねえだろーー
つまりこれは“軟禁”だ。
生憎乙女的思考は持ち合わせてなど居ない
過去や未来を知っていると名乗ってしまってその後自分のテリトリーに連れて来れるなんて利用したい腹積りがある人間ならこの上無いチャンスだろう
そもそも得体の知れない奴が家にいられたら自分なら嫌だ
寧ろよく家、連れて来れたな
夜には帰るとかアバウトな話だ。
今すぐにでもここを出て行きたい!
自制心と自尊心が歪み合い
本当にしたい行動が明確なのにも関わらず
“鍵が無い”という事を逆手に
此処に居て欲しいと言われたとしても
赤井さんからすればーーーー
この時のようやく気付いた。
この世界に飛ばされて以来こんなに
動揺した事は無かっただろう
赤井さんが支給してくれた携帯から
番号経由でメッセージを打ち込む。
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降谷零の自宅で保護されていました。
家主が居ない様なので今から工藤邸に戻ります。
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送信してバングルを操作しピッキングツールを取り出す。
彼の部屋の鍵穴に傷をつけない様に鍵をかけてその部屋を出た。
せめてお礼を言った方が良いだろうかと迷いながら工藤邸へ向け脚を動かしていると携帯が通知を鳴らした。
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迎えに行った方が良いか?
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過保護なのか?子供扱いなのか?
疑問に疑問が飛び交うが、取り敢えず問題なく帰れそうだと返信した。
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