第13章 メイド服を着た姫様と世界樹
あくまでも それは…今はの話で
メリーには居たのだから…
私ではない…彼の姫様と言う存在が…
世界が虚無に戻って
別のお姫様の執事になるなら
そのデータだって…綺麗にリセットした方が
メリーだって…私だって…
こんな変なわだかまりを持たずに…感じずに
お姫様と…その執事の役割を…
何の抵抗もなく
ロールプレイング出来たんじゃないかって
この世界のシステムに…理不尽さを感じてしまう
その何処か偏りのある…様な
メリーとこの世界の条理には…
どこかしらに…その姫様を…感じるから
ズキズキと…自分の胸が痛む…
この胸の痛みの名は…
嫉妬…と呼ばれる物なのだろうか…
彼と世界を見捨ててもなお…
その痕跡を…残り香の様に残して居て
ジリジリと…胸が焼けるような痛みを感じる
さっきとは違う種類の胸の痛みで
何かに例えるのも…
言葉に置き換えるにも曖昧な感情で
あの…人の嫌味に嫌味で返す様な
あんなふてぶてしいメリーの嫌味も…
自分と…私との距離を…隔てたがっている
彼の…自己防衛にも思えて来て
彼の葛藤が垣間見える気がする
言うなれば…恐れだ…
私と親密になり過ぎるのを…恐れてる
主と執事であるべき関係が
男女のそれになるのが…
彼に取って 均衡を乱す…と…
そう…思う理由が…理屈が…
彼には… メリーには…あるからだ
そんな事を…鏡の向こうで
私の髪を結っているメリーの顔を
鏡越しに見ながら いろはは考えていた