第12章 強制終了と執事の見る夢とメリーの嘘
『そう…、来られますか…成程。
いろは様は、なかなかに狡い…
お方にあられますね…、少々
憎らしさにも似た様な感情を
憶えてもしまいそうに御座います』
「何とでも言ってよ?
狡いのは…メリーもでしょ?
狡い主と狡い執事だから、狡い者同士なんだし。
きっと、この先も上手くやって行けるって」
『ですから、その様な…所に御座います…。
私の厚い面の皮を、その貴方の
お可愛らしい、お節介にも似た
好奇心で剥がそうなど…、なさりますと、
代償が高く…つきますよ?姫様』
じっと…真っすぐに
いろはがメリーの目を見つめて来て
その瞳には一点の曇りすらも見当たらない
少々からかってもみたが
その姫様の瞳を見れば…
姫様が好奇心でそれを言ってるのではないのが
こちらにも…分かる
意識してるのか無意識なのか…
その…内なる物を推しはかろうとしても…
どうにも…底のそこが見えて来ない様だった
「それは…好奇心は…猫をも殺すから?
メリーは猫…食べたりしないでしょ?羊だもの」
『私は羊の執事ではありますが、…時に
羊の皮を着ただけの狼ではないと、
そう言い切る事は…致しかねますが?
ですが…、その姫様のお言葉の真意を…
私が知った時…に…私が、羊であるか
はたまた狼であるか等…、今は…
それは…私にも、姫様、
貴方自身にも…分かりかねましょうから。
ですが…その線を…越えたいと言うなら…、
それ相応の覚悟を…
お持ちいただかなけば…なりませんよ?姫様』